私は長年にわたり「和食」に携わってきました。和食の「和」とは、「和らげる」「和む」といった意のほか、「和気」のように穏やかでのどかな気分を表すものとして使われます。そうした「和」に込められた思いを大切にし、料理を通じてお客さまの心を「和らげる」ことができたらと思っています。そのために心掛けているのが、苦味、酸味、甘味、塩味、辛味という五味と、視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚という五感に訴えかける料理の創作。お客さまの第一印象を左右する盛り付けにもこだわり、従来の和食の技術に斬新さを融合させた料理を提供できるよう、日々、創意工夫を重ねています。また、ここ鳥羽は食材に恵まれ、年中通してアワビや伊勢海老といった高級食材が扱えるのも大きな魅力です。そうした食材を楽しみにおみえになるリピーターのお客さまも多いので、同じ食材でも調理法を変えて、違った味わいを楽しんでいただけるよう柔軟に対応しています。美味しい料理を通して、人を幸せにできるのが、この仕事の一番の魅力であり、やりがいでもあると思っています。
食への興味、探究心は料理人として常に持ち続けている必要があるでしょう。昔ながらの日本料理の伝統をしっかり継承していく一方で、料理方法などは日々進化していますので、新しい情報を積極的に得て仕事に生かすという姿勢も大事だと思います。また、お客さまの満足度を追求しながらも、コスト管理や衛生管理といった面での配慮も欠かせません。
まずは自分の中での目標を定め、一つひとつ達成していく力を身に着けてください。ここならさまざまな事に挑戦し、自分自身を成長させることができると思います。「この仕事が好き」という強い思いと、少しでも技術を盗んで身に着けようという「向上心」があれば必ず成長できます。食べることが好きな人、細かな心配りのできる人、向上心が強い人、協調性のある人、想像力が豊かな人、何事にも努力を惜しまない人、どれかに当てはまる人なら料理人としての素質は十分あると思います。
御宿 The Earth:総料理長